ArtAnimation私的調査室
(アートアニメーション私的調査室)
●『世界アニメーション映画史』 Anima life‐books
伴野 孝司+望月 信夫:共著、監修:森卓也、編集:並木孝[アニドウ]
1986年刊。アニメーション、特にアートアニメを含むアニメーション史に興味を持つ者にとってバイブルあるいは辞書とも言える本。アートアニメファンを自称するなら必携であろう。
まず第一部「漫画映画の誕生」で米国での「漫画映画」すなわちセルアニメを中心とする商業アニメの発展で活躍したディズニーとそのライバル達について詳述している。第二部では「新しいアニメーションの流れ」と題してノーマン・マクラレンやアレクサンドル・アレクセイエフなどの抽象アニメーションとトルンカ他の人形アニメを取り上げる。そして第三部では「世界アニメの時代」として米国以外のアニメについて述べている。日本のアニメは15ページほどを割いているに過ぎず、本全体としては日本以外に比重を置いた本である。作品と作家の索引がついており、
辞典代わりに使える。
●『世界と日本のアニメーションベスト150』
2003年刊。アニメーションに関係するプロすなわちアニメ作家、アニメーター、声優等々のアンケートにより、世界のアニメーションの順番付けを試みた本。150作品とピックアップ作品30について写真とアンケート回答者による解説を付け加えている。後ろにはアンケート回答者のコメントも原則全て載せてある。
取り上げられている作品であるが「プロ達からのアンケート」ということもあって、完全な商業アニメよりもアートアニメーションが多くなっている。
各アニメーションの解説は必ずしも客観的...というか、作品の的を得た紹介になっているとは限らないけれども、各作品にそれなりに思い入れのある人々が書いている分、各作品自体にかなり興味をそそられる。しかもほとんど画像がついているのが良い。
だから「面白いアートアニメーションはないかな」という場合や「これからアートアニメーションに興味を持ってみようかな」と思っているような場合には、作品をさがす際になかなか参考になるのではないかと思う。
ちなみに具体的に上位10作品を見てみると、
・ユーリ・ノルシュテイン作品2作品
・フレデリックバック『木を植えた男』
・ポール・グリモー『やぶにらみの暴君』
・『イエローサブマリン』
あたりがアートアニメーションに分類されるものであろう(上のうち3人は当サイトでも紹介しているのでリンク先を参照されたい)。
残りは宮崎駿の「未来少年コナン」「となりのトトロ」2作品とディズニーの「ファンタジア」「白雪姫」そして東映動画「わんぱく王子の大蛇退治」である。
このベスト10を見るだけでも本全体の傾向が分かり、アニメーション全体から選ばれているものの、一般の人は知る機会の少ないアートアニメーションがかなりの割合を占めていることが分かるだろう。